凡そ針は,先ず鉄を錘(ひっかけたらす)して細条と為す。鉄尺(ものさし)一根を用い,錐(きりで穴をあける)して線眼を成し,条鉄を抽過して線を成し,寸に逐(したがう)って剪断して針と為す。先ず其の末を鎈(やすり)して穎(とがったもの)と成し,小槌を用いて敲いて本を扁(平らで薄い)にし,鋼錐で鼻を穿ち,複た其の外を鎈す。然る後に釜に入れ,慢火にて炒(いる)熬(じっくりいる)す。炒した後に土末を以て松木、火天、豆豉の三物に入れ罨(おおい)蓋(ふた)し,下火を用いて蒸す。針二三口を留め其の外に插して,以て火候を試る。其の外針の入手捻して粉砕と成れば,則ち其の下針の火候皆な足る。然る後に封を開き,水に入れて之を健す。凡そ引線して衣を成すと刺繡とには,其の質皆な剛。惟だ馬尾(福建馬尾鎮)の刺工が冠を為るには,則ち柳条軟針を用う。分別の妙は,水火健法に在りと云。
どうもやはり,鉄の針も,神戸源蔵さんのところで金銀の針を造っていたのと同様に,先ず針金にして,鋼鉄の板に穿たれた孔を通して引き,順繰りに小さな孔を通して引き,次第に細くしていったような……。