酒がかなりはいってからの,しかも話の端のことながら,「當の当用漢字を当とするのは,日本で勝手に作った形だ」,と聞いたような気がする。
醒めてつらつら考えるに,これは草書の楷書化(こんな言い方が有るのかどうかも知らない)じゃないか。
「ひらがなは草書の変化だ」とも,聞いたことが有るような気もする。で,ひらがなの形には,もとはいろいろ有ったらしい。タに相当するものには,太・田・多・佗・唾・堂・當などが有る。このうち今の「た」になったのは,直接的にはやはり「太」だろう。
で,「當」の草書は下部をもう一歩整理すれば確かに「当」に近くなる。タの音を表現するひらがなとして「當」の草書に見慣れていれば,「當」と書くべきときに,略して「当」に近い形を書くことは有ったろう。それを当用漢字として採用した。
ひらがなが関わっているとなると,「日本で勝手に作った形」,なのかも知れない。でも,草書の楷書化に過ぎないとなれば,中華の民だってやるんじゃないかと思って,『宋元以来俗字譜』を見たら,あっさり載ってました。通俗小説、目連記、金瓶梅、嶺南逸事。