「壬」は漢音でジン,呉音でニンです。『漢辞海』にはそう載ってます。
ところが,小篆では2種類あって,ジンとテイだと指摘されました。いわれてみると廷の声符としてはテイでないと困る。
そこで『説文解字』をみてみると,「壬,善也。从人士。士,事也。一曰象物出地挺生也。」と有りました。段玉裁は壬挺疊韵といってますから,多分,あとの一曰がテイなんでしょう。もともと別の字なのかも知れない。下部が士の字(壬ジン?)と土の字(𡈼テイ?)。
『漢辞海』の親字は廴に壬ですが,異体字として廴に𡈼も載せている。「なりたち」の項には,「𡈼」が音とある。それ以上の説明は無い。『漢辞海』(第3版)の音訓索引テイに「𡈼」は無い。
『新字源』では「𡈼」(テイ、チ、チョウ)と「壬」(ジン・ニン)の双方を載せてます。無論,意味も異なる。
「廷」は𡈼の声であって,壬の声の「任」とは関係ない,と言うべきだったかも知れない。
でも,漢字の形って信用ならない,というお話でもあったわけで……。
廷孔ねえ,天子が諸官に引見する庭への孔というより,脣シンに関わるなにかのほうが,古代中国人の発想に叶いそうなんだが。
☞壬の声
𢇦(广に壬)というのも有って,『玉篇』音任。下也。
回覆刪除なんだかとっても妖しい。