私と島田先生の本格的な縁は,鍼灸師養成学校の三年次,漢方概論の授業に始まる。(本来は小野文恵先生の予定だったが,大病後の為に急遽ピンチヒッターがたてられた。)島田先生の漢方概論には特徴が有って,先ず生徒に『素問』と『霊枢』を買わせる。そして,おおむね『素問』を教科書として話をする。例えば摂生の話なら上古天真論,陰陽の話なら陰陽応象大論,蔵象の話なら霊蘭秘典論とか。(勿論,経脈の話には『霊枢』の経脈篇でしたが。)『素問』の最重要な篇には大雑把ながら目を通したというわけである。そこで卒業後,何人かの同窓生と古典の読書会を始めたときには,対象を『霊枢』とすることにした。島田先生に顧問をお願いして,引き受けていただいたのではあるが,確か発会式と称して一緒に酒を飲んだくらいのものではなかったか。ただ,折に触れてアドバイスはいただいたし,毎週一回の二年ほどで『霊枢』を一応読み終わった後に,次を何にするかの相談にも乗ってもらった。その回答が,実は『難経』である。だから,嫌いというよりは,初心者は用心した方が良いという意味だったと思っている。
つまり,安易なマニュアルとして利用しようということなら,やめたほうが良いという意味だろう。私なんぞは,未だに『難経』にはとらわれそうで,だから避けたい気分が強い。厄介なことである。
『難経訳解』は,こわごわ読んでみた,とりあえず2011年10月末の段階の記録である。 (もう,半年も前だ!)
【参考書】
郭靄春・郭洪図 『〈八十一難経〉集解』 1984年 天津科学技術出版社
凌耀星 『難経語訳』 1990年 人民衛生出版社
凌耀星 『難経校注』 1991年 人民衛生出版社
何愛華 『難経解難校訳』 1992年 中国中医薬出版社
沈澍農・武丹丹 『難経導読』 2008年 人民軍医出版社
煙建華 『難経理論与実践』 2009年 人民衛生出版社
『黄帝内経素問』 顧従徳本
『黄帝内経霊枢』 明刊未詳本
『難経』嫌いを標榜していると言ったって,当代の,そこそこ評価の高い本は,そこそこ持っているわけだ。ただ,ただ昔からのご高説を祖述しただけの本は,敬遠している,らしい。
回覆刪除