『中国針灸史図鑑』を読んでいて,意外な感じです。
「惜しいことにその針書に未だかつて刊行され世に伝えられたものは無い。」
それはまあ,当時の出版事情ならさも有らん,でしょうが,実は上海の凌氏といえば,明代の套印――多色刷りで有名な人たちなんです。凌雲という名も,崇禎年刊に活躍したとして,米山寅太郎先生の『図説中国印刷史』にも登場します。『文心彫竜』の五色刷なんてものを手がけたそうです。勿論,同名異人なんてことは無いでしょう。米山氏も『明史』の「方伎伝」に伝があるとして,「道人から鍼術を授かり,多くの難病を治癒させたという」と紹介しています。
どうして,自分たちで,針書を出版しなかったんでしょう。やっぱり,自分の本を出すのは気恥ずかしかったのでしょうか,それとも道人に禁じられたのでしょうか。あるいはそもそも,方伎は書を以て伝えられるものではない,と悟っていたのでしょうか。
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