足少陰の脈は,腎の脈なのか。
それはまあ,経脈篇には「腎足少陰之脈」と書いてある。でも,だから腎の脈だと素直に思うほど,私は素直な人ではない。
経脈篇の流注をみると,腎に属し,膀胱を絡い,肝を貫き,肺に入り,また出て心を絡うという。してみると,三陽一陰説の一陰で,だからほとんど全ての蔵に関わると言いたいくらいだ。ただ,馬王堆の陰陽十一脈経でも,少陰脈は,腎に繋するといっている。十一脈経で五蔵との関係をいうのは極く珍しい。やっぱり腎の脈でいいのかなあ。
病症のほうで,他の蔵と関わりそうなのは先ず心の問題で,それに該当する文字は陰陽十一脈経にもある。少なくとも心腎の脈くらいの認識は望ましいんじゃないか。
で,気になるのは「心惕惕,如人將捕之」。この「人の将にこれを捕らんとするがごとし」は,邪気蔵府病形篇では,胆の病でいっている。四時気篇でも,邪が胆に在るときにいう。やっぱり,胆を介して肝との関わりも,相当に深いんじゃないか。やっぱり,ほとんど全ての蔵に関わるという認識も,あたり!なんじゃないか。
で、「心惕惕,如人將捕之」に類する主治は、『甲乙』では然谷穴にある。『甲乙』では太溪穴にある「閉戸塞牖而處」は、経脈篇の胃足陽明の脈の是動病にある。一筋縄ではいかない。
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