2012年8月13日 星期一

自由な治療

これは考えていることであって,あんたにはできているのか,と問われるとつらいところなんだけど,『霊枢』を読んで,それに拠る治療というと,どんなだろうか,と。

五蔵の病は原穴で,六府の病は(下)合穴で,ということで良いのではないか。それが『霊枢』流の本治法。無論,それで上手くいかなければ,何らかの理屈で,本輸のセットに助けを求める。経脈の組み合わせも考える。そういう時に,奥の手として,現今の各派のマニュアルを役立てれば良い。
さらには病所を上下で挟み撃ちという発想も有りそうだから,原穴と背輸,合穴と膏、肓の原,なんて組み合わせも,標準仕様なんじゃなかろうか。
頚周りの「天」を冠する穴は,体表の組織のつらなりを考えた場合のものかな。でも,そうとは限らない症状の記載も有りそうだよね。大牖五部なんてのも有ることだし。
そして,残りの随伴症状は,適当に,『霊枢』諸篇から拾い上げたか,あるいは誰かから教わったかの特効穴でも使って,必要に応じてパッパッって済ませる。この標治法は,いわゆる経絡治療の場合とさして差は無かろう。
ただ,当然ながら,『霊枢』流では本治法のみ,標治法のみというのが,むしろ普通だったんだろう。

その他にたぶん,経筋治療がより有効,という世界は有りそう。

針灸治療というのは,本来,もっともっと自由な世界なんじゃないか。

2 則留言:

  1. 例えば,腹がよく鳴り,気が胸に衝き上げて息苦しいし,立っているのもしんどい。
    腹が鳴るのを邪が大腸に在るからと診て,その合穴の巨虚の上廉を刺す。衝き上げるのは上腹部から横隔膜へと考えて,膏の原の鳩尾を刺す。やっぱり,胃にだって問題は有るだろうとなれば,三里も刺す。何だか,『霊枢』のどこかに有ったみたい。

    鳩尾が教科書的には禁針禁灸であることを憚れば,臨床の上手は膈兪あたりで何とかするんじゃないか。そこらが応用というもので,レジメに頼りっきりの初心者との違い。冷や奴に醤油を切らしたって,塩をふれば美味しく食べられる。

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  2. 結局のところ、鍼治療の本来は、やっぱり特効穴治療なんじゃないかと思う。
    五臓の病に原穴、六腑の病に合穴というのも、臓腑の名でまとめた病症群に対する特効穴を、整理して名付けたということでしょう。

    マニュアル的な対処は、つまるところ効率よく特効穴にたどりつく為の方便。
    井上雅文先生の施術の実際は、散鍼だったと思う。で、マニュアルは緻密だけれど、つぎつぎと候補となる穴に触れていって、これが今は効くというポイントで手が止まるんだ、そして、その一穴で効かせてしまうんだ、と言われたことが有る。あんな七面倒な『脈状診の研究』なんてものを出したから、あの全部の穴がそれぞれに効くとか、総合して効くと思っている人が多いだろうけど、実は違うんだと、笑われた。

    もしも、散鍼が苦手であっても、候補になる穴にゆっくりと触れていって、ここぞというのを感じることさえできたら、そこに拘ればいいのでは。

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