『霊枢』経脈に:「胃足陽明之脈……是動則病洒洒振寒,善呻數欠,顔黒,病至則惡人與火,聞木聲惕然驚,心欲動,獨閉戸塞牖而處」とあり,『霊枢経校釈』には,「
心動,欲は,もとは
心欲動に作るが,『素問』脈解篇によって改め,
欲字は下につづけて読み,『脈経』『千金』『図経』と合わせる」という。してみると,『霊枢』と『太素』が「心欲動」に作る少数派です。しかも,『太素』は,楊上善注に「故に戶を閉じて独処せんと欲するなり」というところからみるに,「獨閉戶牖而處」でなく「欲獨閉戶牖而處」だった可能性が有る。さらに,馬王堆の陰陽十一脈では,「聞木聲惕然驚心欲動閉戸塞牖而處」を「□木音則■然而驚心
腸欲獨閉戶牖而處」(※□は残缺,『霊枢』では聞。■は傷と心を上下に置く形,『霊枢』では惕。
腸は,実は
愓にあたるだろう。『馬王堆漢墓帛書[肆]』が,惕とするのは疑問)とする。「
愓」は,『説文』に放也,『集韻』に直疾貌。心が直疾であるのと,心が動ずるのとは,まあ似たようなもの。「心
愓」が『霊枢』で「心動」に変わったと思われる。音も近いんじゃないか。しかして「欲」字は,陰陽十一脈でもその下に在る。
張家山漢墓竹簡の脈書(馬継興氏の所謂「丙本」)では,「聞木音則狄然驚心愓然欲獨閉戶牖而處」ですね。「惕」か「愓」かは微妙だけど,どちらかといえば「愓」。それにしても,その下に「然」の字が有るのをどうしようか。
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