弦をはなれた箭にとって,宙に浮いて飛んでいることが全てである。
やがて獲物をつらぬくか,的に中るか,
はたまた地に落ちるかは,箭の知ったことではない。
あるいは,地に落ちたものこそが,飛びきった箭,というものかも知れない。
どうせ何時かは地に落ちるのに,どうして飛ぶのか。
箭の知るところではない。
知っているはずの何者かがいることを,箭は知らない。
(いないのかも知れない。)
飛んでいるから,箭である。
ただ飛んでいるだけの箭が,最も幸せな箭である,らしい。
飛んでいること自体は,それだけは,楽しいはずのものだ。
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